「ビスポーク(Bespoke)」という言葉は、オーダースーツの世界ではよく耳にする言葉です。
その語源は、古い英語の「bespeak」にあると言われています。※諸説あり
「前もって話す」「相談して注文する」という意味を持つこの言葉には、単にサイズを測って服を作る以上の意味が込められています。
ビスポークとは、よく話し合い、その人のためだけの一着を仕立てること。
だから私たちは、お客様との会話をとても大切にしています。

スーツを作る前に、その人を知る。
オーダースーツは、生地やデザインを決めるだけではありません。
どんな仕事をされているのか。
どんな場面で着るのか。
どんな印象を大切にしたいのか。
時には、お仕事のこと、ご家族のこと、趣味や将来の夢まで話が広がることもあります。
そうした会話を重ねることで、その方らしい一着が少しずつ形になっていきます。

昔の商売は、みんなビスポークだった。
昔は、洋服屋だけではありませんでした。
魚屋さんも、八百屋さんも、靴屋さんも。
お店の人はお客様の顔を知り、家族を知り、近況を知っていました。
お客様もまた、お店の人との会話を楽しみに通っていたのだと思います。
僕も何かを買う時に店員の方をお話をして買い物をすることを楽しんだりします。
品物を買うことだけが目的ではなく、「あのお店へ行けば知っている人がいる」という安心感も、商売の価値の一つだったのではないでしょうか。

便利な時代だからこそ、人と話す価値がある。
今ではQRコードで注文し、セルフレジで会計を済ませ、ロボットが料理を運ぶお店も珍しくありません。
とても便利で、効率的な時代になりました。
一方で、人と話す機会は少しずつ減っているようにも感じます。
だからこそ、注文以外の会話をしながら、一つのものを一緒に作り上げていく時間は、とても贅沢なものになっているのかもしれません。
私たちが作っているのは、スーツだけではありません。

DraweAr.では、スーツを仕立てることはもちろんですが、お客様との時間も大切にしています。
採寸をしながら。
生地を一緒に選びながら。
仮縫いで何度も着心地を確かめながら。
何気ない会話を重ね、その方の人生や価値観に少しだけ触れさせていただく。
その積み重ねが、一着のスーツに表れると私たちは信じています。
ビスポークとは、「その人だけの服」を作ること。
そして、「その人との関係」を少しずつ仕立てていくことでもあるのだと思います。
便利さでは置き換えられない価値を、これからも一着一着、お客様との対話を大切にしながら届けていきたいと考えています。
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