東京ビスポークテーラー ドロアーの島村です。

私たちドロアーのお客様には、様々なファッション好きがいらっしゃいます。

デニムが好き。革靴が好き。
帽子やヴィンテージ、古着を長く追いかけている人もいます。

今では何着もスーツを仕立てているお客様が、最初から「スーツ好き」だったわけではありません。
むしろ、既製のスーツに違和感を持っていた人も多いのです。

窮屈だったり、肩が合わなかったり、格好をつけている感じがして落ち着かなかったり。

けれど、服そのものへの感覚が深い方が、ある時何かのきっかけで「仕立てスーツ:ビスポーク」という世界へ辿り着いたのでしょう。

ビスポークとは、そういう場所なのかもしれません。

服好きの喜びは、所有より「身体に馴染ませる」ことにある

デニムを長く穿いている人は、生地が身体に馴染んでいく感覚を知っています。
革靴を育てる人は、履き皺や沈み込みが、その人自身の癖になっていくことを知っています。

高級ブランドの服や小物をたくさんコレクションしている人には、「買うこと」「所有すること」が好きな人も多いと思います。

しかし、本当に服が好きな人は、買ったときの「所有の満足感」以上に、「自分の身体に馴染ませる」ことに喜びを感じる気がします。

そして、ビスポークの面白さは、モノができる前からその喜びを感じられるところにあります。
完成したものを買うのではなく、会話を重ねながら、その人の身体や感覚に合わせて形を探していく。

だからビスポークをオーダーする喜びは、高級品を買う満足感とはまったく違います。
ついに手に入れたという達成感ではなく、むしろ、とても個人的な喜びのはじまりの時間なのです。

「サイズが合う」と、「身体に合う」は違う

既製服でも、サイズ表記としては間違ってはいません。

S、M、Lなどの大雑把なサイズは、メーカによってかなりバラつきますが、具体的な寸法が入っている場合は、肩幅も、袖丈も、胸囲も、数字上は問題ない。

けれど、なぜか落ち着かない。

首が苦しい。
肩が引っ張られる。
動くと変な皺が入る。

鏡を見ると、どこか「着せられている」感じがする。

それは、身体というものが、単純な寸法だけでは出来ていないからです。

肩の傾き。
姿勢。
重心。
立ち方。
筋肉の付き方。

人の体は、一人ひとり全く違います。

ビスポークでは、単に数字を測るだけではなく、その人がどう立ち、どう動き、どんな空気を纏っているのかを見ています。

そして、服は本来——昭和の初め頃までは、その違いに合わせて作られるものでした。
店に吊るしてある既成服の中から選ぶのが常識になったのは、服の長い歴史からすればほんの最近のことなんです。

ビスポークとは、「会話しながら作る服」

「ビスポーク」という言葉は、もともと “be spoken for” から来たと言われています。
つまり、「話し合いながら作る」ということ。

生地を選び、形を考え、用途を聞き、好みを探る。
時には、お客様自身もまだ言葉になっていない感覚を、一緒に整理していく。

世界に一着のオリジナルだといって、派手な服を作る必要はありません。
むしろ、本当に良いビスポークは、過剰に主張しないことも多い。

その人自身が自然に見える。
無理をしていない。
でも、どこか美しい。

そういう服が理想です。

服好きほど、最後は「情報量の少ない服」に向かう

服をたくさん見てきた人ほど、最終的には装飾を減らしていくことがあります。

派手なロゴや、分かりやすい流行デザインではなく、肩の落ち方や、生地の空気感、シルエットの美しさのような、小さな違いに惹かれていく。

それは、良い革靴や、良い器や、良い家具にも少し似ているかもしれません。

情報量が少ないからこそ、誤魔化せない。
だからこそ面白い。

スーツもまた、とても静かな服です。

しかし静かだからこそ、その人自身がよく見える。だから、世界で長く愛されてきたんですね。

「自信を与える服」ではなく、「自然でいられる服」

スーツというと、「強く見せるもの」というイメージを持つ人もいます。

もちろん、服には人を支える力があります。
けれど、本当に身体に合った服は、必要以上に自分を大きく見せようとはしません。

むしろ、無理をしなくても自然に立てる。自分らしく振る舞える。そういう感覚に近い。

DraweAr.では、ただ高級な素材で高価なスーツを作りたいわけではありません。

その人の身体、その人の感覚、その人の人生に、静かに馴染んでいく一着を、一緒に考えていきたいと思っております。

スーツが好きではなくても、構いません
一度見にいらっしゃいませんか

スーツの魅力をつい語ってしまいましたが、最初からスーツが好きな必要はありません。

むしろ、デニムでも、革靴でも、帽子でも、古い服でも、何か「良いものが好き」という感覚がある人ほど、ビスポークを面白いと感じてくれると思っています。

世界に大量生産の商品がなかった頃(つい最近です!)の、ごく当たり前の感覚。

人の手で作ること。
身体に合わせること。
長く付き合うこと。

もしあなたが、そういう価値観に惹かれるのなら、ビスポークという世界は、思っているより身近なものかもしれません。

もしご興味があれば、一度ドロアーのアトリエに遊びにいらっしゃいませんか?
浅草のお酉様のすぐそば。遠方でしたら、オンラインでの訪問でも構いません。


どうぞお気軽に。
ご連絡、お待ちしております。





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